それはとても悲しい、魂が紡ぎ出すメロディーです。
カナダの路上でピアノを弾く姿を通りすがりの人がyoutube にアップしたことで、世界中に有名になったホームレスの男性・ライアン・アーカンド (Ryan Arcnad)。
地元エドモントでは、ピアノマン(Piano man) と呼ばれていたそうです。
カナダで今もまだ社会差別を受ける先住民の生まれで(米国のインディアン(native American) のように)、4歳のときから里親と暮らし、そのとき地下室でピアノを見つけたのがすべての始まり。
独学でピアノを覚え、13歳には家出をして、路上生活を始めます。
その後しばらく実の父親と暮らすも、彼が19歳のとき死去。
結婚していたこともあるそうですが、妻と娘を自動車事故で亡くし、そのあと仕事もやめて何もする気をなくし、アルコール依存症のホームレスとなります。
生きることを、諦めてしまったのでしょうね。
強い心で試練を乗り越えていける人もいれば、心が優しくて精神的に折れてしまう人もいる。
悲しくも切ない現実・・・。
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カナダのCBC Newが、Youtube で有名になった彼を探しだし、2014年に公園のベンチで行ったインタビュー。
信仰を持っていても神を信じない人もいる。
私には信仰というものはないが、大いなる存在を信じている。きっとその存在は、ちょうどよいタイミングで、自分をこのように使うことを決めてくれていたんだと思う。
そして、このようなギフトをくれたことを(*youtubeで世界の人が観てくれたことを)、とても感謝している。私は有名になりたいわけでなく、ただ、ピアノを弾きたいだけ。
ピアノでもギターでも、歌いたい人でも、やりたいことがあるなら、影に隠れていないで前にでてくるといいと思う。
自分のために。
お金や誰かのためでなく、自分のために、やりたいことをやるといいと思うな・・・。
(Ryan Arcand)
インタビュアーが近くのピアノがある教会に彼を連れだします。
ピアノを前にして、彼の目にパッと光がさす瞬間。
「わ〜、グランドピアノだ!」と子供のように嬉しそう。
ボロボロのジャケットと靴ひものないシューズ、そして スタンウェイのグランドピアノ。
彼が作曲し自身を有名にした、The Biginning (はじまり)が、始まります。
アルコールのせいか、指の運びがちょっとおぼつきません。
でも私は(他にもアップされている中で)この映像が、一番好きです。
精神的苦悶とアルコールが浸食したとても44歳(当時)には見えないその体を通して紡ぎ出される《The Beginning 》 は
聴く人の心の内にある悲しみや痛みを浮き出し、そして癒してくれる、不思議な曲です。
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Ryan Arcandは、昨日、2018年3月8日、ホームレスのシェルターで46年の人生を閉じました。
死因は不明とのことですが、
あまりに辛い人生を送った人は、自分の逝くタイミングを、神さまが決めさせてくれるといいます。
「もういいよっ」て、
すべてのものを受け入れた目で神さまに言ったのかもしれませんね・・・。