The key in the hand (掌の鍵)

塩田千春(shiota chiharu) ・ベルリン在住のアーティスト

shiota chiharu the keys in the hand

shiota chiharu
the keys in the hand

5万の魂の物語

5万の魂の物語

 

2艘の船は手を象徴しているそうだ。
その手は天から降り注ぐ人間の物語を受け止める。
そして、物語は新しく紡がれ、未来にむけて進んでいく。

作品に使われた5万個の鍵は、世界から送られてきたものだそうです。
一つ一つの小さな鍵に、時と空間を超えた思いが閉じ込められている。苦しみや憎しみ、悲しみ、そして喜びや愛おしさ、人間として経験できるすべての思いが。

言語や、文化、歴史や社会的制約を超え、この上なく絡まり合う赤い糸がそれぞれの想い出を束ねる。
・・・あたかも人間の集合意識の塊みたいに。
わたしたちは微細な場(フィールド)でつながっていることが、一目瞭然にわかる感じですね。


そういえば今までいくつの鍵を持ったのだろう?
あなたはどうだろうか?

ほとんどは失われたけど、どこかにしまい込んだ想いでの鍵は、ヒョンな場所からヒョンなきっかけで顔をだす。
ただもうそれが何の鍵だったのかもぼんやりとしか思い出せないのだが・・・。

■ ■
海外の友人のFBに、彼女のボーイフレンドがアパートの部屋の写真と一緒にこんな書き込みをして思わずジ〜ンとしたことがある。

「 ◯◯◯、今日から鍵をシェアしようよ!」

彼女は身内を亡くし、もう立ち直れないのではと周りが心配したことがある。
でもサナギが蝶になるように、最後に会った時はとびきりの笑顔になっていた。あぁ、悲しみをちゃんと一人で超えたんだね、やったねって。

人の感情にネガティブとか、ポジティブとか、ほんとは無駄なものなんて何もない。
みんな神さまが与えてくれた、ここの世界の美しさに感謝し深く味わえるようになるためのレッスン。
痛みや苦しみを知ることも人間の本能の一つであって、確かに固いサナギの皮の中で変容するスピードを早め、人に対する思いやりや慈しみを深めてくれる。

わたしたちは、恐れを超えてそれに向き合う少しの勇気さえあればいい・・・。
そう鍵は、内側から開けることだって必要なのだ。

■ ■ ■

Shiotaさんのインスタレーションは、ベネチアで2015年11月22日(日)まで開催しているので、近くに旅行予定のある方はぜひ行かれてみるのもいいかも。
きっとそれぞれの人生に時空を超えて響いてくるものがあると思います。

ヴェネチア・ビエンナーレ国際美術展