Jan Kersschot

 

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この作品は、ヤン・ケルスショット(Jan Kersschot ) というアーティストによるもの。
彼はベルギー在住の医師でもある。

作品は現在3シリーズで構成され、ハンドスケープ(Handscapes)スキンスケープ(Skinscapes)アイスケープ(Eyescapes)へと続いている。

このご時世に生きる多くの人は、日々、頭の中に浮かぶ思考に翻弄されながらそれを止める術も知らず流されている。
ケルスショットの作品は、手や皮膚に覆われた身体の中に棲むそんな思考や感情という個を超え、わたしたちを普遍的な意識や魂の深みへと導いてくれる。

静かな心で作品を見つめたとき、それぞれの人生の深いところにある “なにか“ が、懐かしさとともに顕れてくるのではないだろうか。
まるでそれは祈りのような、その時は苦しみや悲しみだったものが今では平和となっているような、そのようなものかもしれない・・・。

アイスケープス (EYESCAPES)
ヤン・ケルスショットの作品は、人体を褒め称える詩である。

人間の「手」のみを被写体にした第一作目『ハンドスケープ』に続き、第二作目『スキンスケープ』はテーマをさらに絞り込み、手の「皮膚」だけにフォーカスを当てた。そして、シリーズ三作目となる『アイスケープ』が熱い視線を注ぐのは、人間の「目」だ。

毎回ひとつのテーマにこだわるケルスショットのモノクローム写真は常に、まるで私たち自身が被写体に迫っているような臨場感と新たな発見をもたらしてくれる。ケルスショット作品には予想外の展開がつきものだ。彼のファインダーを通しただけで、見慣れたはずの身体の一部が、普段のそれとはまったく違う姿で写し出される。見る者によっては、まぶたの上に生えたうぶ毛や、目の下の皮膚のデリケートな質感に思わず目を奪われてしまうかもしれない。ピント調整が織りなす相乗効果に好奇心をくすぐられる者もいるだろう。ぼかしを駆使した作品は、単なる「画」という枠を超え、もはや概念と呼ぶにふさわしい。

作品の世界にもう一歩踏み込んでみれば、写真におさめられたモデルだけでなく、見ている私たちの姿をも映していることに気付かされるだろう。より長く見つめ続ければ、私たち自身の何かを表現しているようにも感じてくるはずだ。もしかしたらその過程の中で、私たちが普段隠していることや、私たちの心の深淵に潜む何かが、顕在化するのかもしれない。
幾重にも層をなすケルスショットの作品は、モノクローム上の白と黒だけでなく、目に見えるものと見えざるもの、意識と無意識、そして私たちが他者に見せる姿と見せない姿、それぞれ相反するものの微妙な均衡関係を色濃く反映している。したがって、人間が生きる上での光と影を映し出す 心の姿 (mental landscapes) となるのだ。

Michael Gardner  (訳:Shizu Kawata)

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日本でのヤン・ケルスショットの作品のお問い合わせは、西川ロミまで